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2016/10/21

ミーハー

 「ミーハー」は、みいちゃんはぁちゃんの意で、女子の名は「み」「は」で始まるものが多いというものや、流行や周りの人の趣味などにすぐ同調する人を賤しめていう語だそうです。みぃはぁは「ミーハー族」でもあります。
最近「ミーハー」を愉しんでいることがあるのです。ミーハーしているのは、能楽師です。

  能楽に関しては素人ですが、運よくチケットが入手できたら観世流「能」の鑑賞に出かけます。これは完全に嵌まっているという状態です。
  何と言っても宗家の舞が素晴らしいのです。至芸というか…その精神の姿勢に圧倒されます。忘我の境地もかくや。という空間に吸い込まれていきます。
  能の公演は笛の音が揚幕の向こうから見所に響くと「始まりますよぉ」の合図です。お囃子方は橋掛かりから登場します。地謡は切戸口からが登場します。全員紋付袴で素面です。能は様式美芸能の最たるものの一つで、簡素な舞台装置で最大無限の精神空間を表現しているように思えます。
  舞台にはその後、揚幕から素面のワキ方が登場します。主役はシテといって能面をつけて後から登場します。
  最初の頃は気がつかなかったことですが、このワキ方(ほとんどが僧侶姿で登場します)に美形つまり今でいうイケメンの能楽師が目に留まるようになりました。蛇足ですが森羅万象美しいものはなんでも好きで美人も好きですが、美男子は好きになれないのです。で…美男子は歯牙にもかけませんでしたが、観ているとそのワキ方は宗家のシテに見劣りがしないのです。互角の力を纏って演じています。
  戻ってきて早速彼を調べてみました。いや恐れ入りました。「福王和幸」ワキ方福王流の嫡男でした。筋金入りです。その瞬間から「福王さま」と「さま」をつけてコロッと贔屓になりました(笑)その後「能楽」を観る基準がシテ方は宗家、ワキ方は福王和幸をと…希望しているのですが、なかなか機会が訪れません。それもまた由です。
  ところが十月二日の「追善公演」の組み合わせは宗家と「福王さま」でした。さらにどうしたことか、正面の一列目の席が取れたのです。
  当日は「福王さま」との距離は一軒ほどです。その端正な横顔。それにもまして檜の板舞台で不安定な型のままで、長時間…まばたきも数える程ひっそりと、微動もせずに、座って保っていられる修練の賜物に「うぅ〜ん」と感嘆の声を飲み込みました。(能楽師はすべての演目を覚えていますから、リハーサルは一回だけだそうです。それでいてシテとワキは「阿吽」の呼吸で舞台が務められるとは、まさにプロの芸能集団です)
  能楽師としては背が高くて目に立つ方です。あの容姿だとどの世界でも通用しそうですが、「能」という古典芸能を伝承されているからこそ応援をさせていただきたいのです。しかしすでに「福王さま」の追っかけが存在するそうです。さも有り難です。
  ミーハーは、個人的なブームですが、美形に魅せられるようになったことは老いの心変わりでしょうか。はたまた「福王さま」だけが特別なのでしょうか。とまれ、福王和幸というシテ方の逸材を眼福として「能楽」に導かれていくのも嬉しいことではありませんか。いずれにしても…身辺の華やぎは多い方が…素敵に決まっています。

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